「３月10日 佐渡の日」
■はじめに
筆者は「佐渡」と聞いても、佐渡金山、佐渡おけさ、トキくらいしか思い浮かばず、佐渡は今ひとつなじみのない土地に思えます。
新潟までは何度か足を運びましたが、そこからまたカーフェリーで２時間半、ジェットフォイルでも１時間かかるのでは、旅の主目的でない限り逡巡してしまいますね。
目 次
佐渡の日とは
筆者のような観光客を島に呼び込もうと、佐渡観光協会が1998（平成10）年に制定したのが「佐渡の日」です。
もちろん、日付は語呂合わせの３月10日です。
■佐渡の日の意味と由来
というわけなので「佐渡の日」については、それ以上の意味や由来はありません。
■佐渡の日のイベント
毎年の３月の週末は「さどの日キャンペーン」として、宿泊料金や船、バスなどの交通機関、観光施設が割引になるサービスを実施しています。
しかし、佐渡ではこの期間に限らず、佐渡薪能や雪割草の展示会、たらい舟競漕など、多くのイベントが開催されています。
佐渡の日の雑学
▽トキの絶滅と復活
トキの学名「Nipponia nippon」が示す通り、トキは日本を中心とした東アジア全域で生息していましたが、19世紀半ばに水田開発や森林伐採、乱獲などによって激減しました。
このため1952（昭和27）年に「特別天然記念物」、1960年には「国際保護鳥」に指定、また1967年には佐渡市にトキ保護センターを開設するなどして保護活動の強化を図ったものの減少には歯止めがかからず、1981（昭和56）年に佐渡で発見された野生の５羽すべてが捕獲されたことで、トキは1998（平成10）年、「野生絶滅」に指定されました。
この「野生絶滅」とは飼育下のみで種が存続し、本来の生息地では絶滅した場合に指定されます。
2003年、捕獲されていた最後の１羽の死亡で、日本のトキは絶滅することになります。
しかし、それに先立って中国から譲り受けていたペアの人工繁殖が成功、３羽のひなが誕生しました。
2007年には自然繁殖を含めた14羽のひなが育ったことで、野生復帰ステーションが開設され、翌年には雄雌５羽ずつが自然に試験放鳥されました。
その後、放鳥されたトキの営巣確認や、自然界で36年ぶりとなるひなの誕生などが相次ぎ、2020年３月には400羽ものトキの姿が確認されるようになりました。
これによって、トキは「野生絶滅」から１ランク戻る「絶滅危惧１A類」に指定変更されています。
▽佐渡の三大流刑者
平安時代、死刑制度が停止されて最高刑が「流罪」だった時期があり、政争に敗れた公家や武士は政権から遠く離れた土地へ流され、罪が重く、身分が高い人ほど流刑先は遠くだったようです。
流刑先は伊豆、土佐、佐渡が特に多かったそうで、佐渡に流された順徳上皇、日蓮、世阿弥を「佐渡の三大流刑者」と言っています。
順徳上皇は後鳥羽上皇が引き起こした承久の乱の責任に連座し、鎌倉幕府によって1221年に佐渡へ流罪となり、22年後に佐渡で46年の生涯を閉じました。
父である後鳥羽上皇を思う和歌を刻む「恋ケ浦碑」、地元民との交流を伝える「順徳上皇の稗粥物語碑」など、佐渡には歌人であった上皇ゆかりの碑が多く建っています。
また、上皇の墓「真野御陵」、亡くなるまで過ごした住居跡「黒木御所跡」、娘を祀る「二宮神社」など、上皇を偲ぶ史跡が多く見られます。
日蓮聖人は時の権力者である北条時頼に提出した「立正安国論」で、相次ぐ地震、飢饉、疫病は幕府や民衆の邪教信仰が原因であるとしたことが幕府批判とされて、1271年に佐渡へ配流となりました。
日蓮聖人は佐渡各地で他宗の僧侶たちと問答を重ね「開目抄」「観心本尊」を世に出し、日蓮宗の本尊「法華曼荼羅」を顕したと言われています。
日蓮聖人は３年で赦免となって鎌倉へ戻ることができました。
日蓮聖人が住んだ根本寺や妙照寺、両親を偲んだ丘にある実相寺、赦免状を受け取った本光寺など、佐渡には日蓮聖人ゆかりの寺や史跡が多く残されています。
能楽を大成させた世阿弥は、室町６代将軍足利義教の怒りに触れて、1434年に佐渡へ流されています。
ある干ばつの夏、世阿弥が雨乞いの舞いを舞ったところ大粒の雨が降り出したという逸話が残されており、その時の面は「雨乞いの面」として受け継がれています。
今も30以上の能舞台が残されている佐渡は「能の里」とも呼ばれています。
■最後に
佐渡島を自転車でぐるっと１周する210kmのレース「佐渡ロングライド」は毎年春に開催されていましたが、コロナ禍で2020年は中止、2021年は秋へと延期になってしまいました。
片側に海を望む起伏に富んだコースの疾走は春にこそふさわしいと思えたのに…残念です。
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