「3月26日 カチューシャの唄の日」
■はじめに
ポニーテールもシュシュも関係ありません。
「カチューシャの唄」を懐かしむ年代も、もう少なくなってしまいました。
「カチューシャかわいや わかれのつらさ~」って、知りませんよね。
目 次
■カチューシャの唄の日とは
島村抱月と松井須磨子が旗揚げした劇団「芸術座」の公演、トルストイの「復活」初日が1914(大正3)年3月26日でした。
この劇中で歌われた「カチューシャの唄」が大ヒットし、日本初の歌謡曲とも言われたことから、3月26日は「カチューシャの唄の日」となりました。
■カチューシャの唄の日の意味と由来
もちろん、この劇中歌「カチューシャの唄」は、ロシア民謡の「カチューシャ」とは別物で、本家版はダークダックスが歌っていたそうで、生前のわが家の爺様の歌声(?)が風呂場から響いてきたのを覚えています。
「りんごの花ほころび 川面にかすみたち 君なき里にも 春はしのびよりぬ」
こっちのカチューシャなら、若い人でも一度は耳にしたことがあるのではないですか。
話を芸術座版に戻すと、当時は劇中に歌を入れることはなかったそうですが、島村がロンドンで観た「復活」の舞台に劇中歌が使われて、それが大好評だったことに目をつけたのが始まりで、それまでパッとしなかった芸術座が花開くことになりました。
この大ヒット曲は大正モダニズムを象徴する歌とも言われ、島村とその弟子相馬御風が作詞、当時まだ無名で島村の書生だった中山晋平が作曲しました。
ところで、島村の芸術座は1919年に解散しており、現在の芸術座は1924年に設立されたもので、第二次芸術座とも呼ばれます。
■カチューシャの唄の日のイベント
カチューシャの唄に関わった島村(島根県浜田市)松井(長野市)相馬(新潟県糸魚川市)中山(長野県中野市)の出身地4都市が、カチューシャの唄つながりで平成元年から、知音都市交流としてさまざまなイベントを持ち回りで開催しています。
2018年には松井須磨子没後100年の記念式典が盛大(主催者発表)に開催されたそうです。
しかし、計算すると99年のはずですが…。
知音(ちいん)とは、親友、知人、昔から心を通わせ合った友という意味だそうです。
■カチューシャの唄の日の雑学
▽島村抱月(1871~1918)と松井須磨子(1886~1919)
松井は大正時代を代表する女優、日本初の歌う女優として、年配の人にはよく知られていますが、二度の離婚歴、整形手術、1917年発売レコードの歌詞に問題があって日本初の発禁処分になるなど、お騒がせ女優でもありました。
坪内逍遥の文芸協会演劇研究生だった松井は、イプセンの「人形の家」の主人公ノラを演じたのがきっかけで、演出を担当した島村と「不適切な関係」となり、スキャンダルが紙上をにぎわせるに及んで、協会を追放されることになります。
早稲田大学の教授でもあった島村も大学を辞めざるを得なくなって、芸術座旗揚げの運びとなりました。
島村は「復活」公演大成功も束の間、1918年にスペイン風邪で急逝、悲嘆に暮れた松井は翌年、短く波乱の多い人生に自ら幕を引きました。
▽トルストイ(1828~1910)「復活」
筆者は重く、暗い作風のロシア文学とは相性が悪いようで、と言うか日本人のDNAにはなじまない気がしています。
それに、登場人物の名前を覚えるだけでひと苦労しますから、何冊かトライしたものの、読み切れた記憶がありません。
トルストイはドストエフスキー、ツルゲーネフと並んで、19世紀のロシア文学を代表する存在ですが、非暴力主義の思想家でもありました。
名だたる代表作としてはなんと言っても「戦争と平和」で、「アンナ・カレーニナ」「復活」と続きます。
では、なぜ「復活」の公演が世界各地で好評だったのかと言うと、たしかに当時のロシアの封建地主制、身分制、シベリア流刑など重苦しい題材を含んではいるものの、「復活」はヒロイン「カチューシャ」の波乱の人生とその愛の物語なんですね。
では、その物語をひどくおおざっぱに紹介します。
ヒロインはエカテリーナですが、どうしてだかこの愛称はカチューシャなんだそうで、やはりカチューシャで話を進めます。
召使いカチューシャはお屋敷の主人の甥ネフリュードフと恋仲になりますが、ネフは100ルーブルの手切れ金をカチューシャに渡して旅立ってしまいます。
愛を信じていたネフに裏切られたカチューシャの人生は、その後転落の一途をたどり、やがて殺人罪の被告(冤罪)となってしまい、その裁判の陪審員として出廷したネフと哀れな再会を果たします。
判決はシベリア送りで、ネフは減刑のために奔走し、カチューシャに求婚しますが、彼女は護送中に知り合った男と結婚してしまいます。
ネフの求婚は愛なのか、それとも贖罪なのか、まだネフを愛しているカチューシャの迷いとは…そんな物語、だそうです。
■まとめ
カチューシャとはアーチ型のヘアバンドで、「復活」の劇中、松井演じる主人公カチューシャがこれを着けていたことから、以後このヘアバンドをカチューシャと呼ぶようになりました。
従って、海外や外国人相手にカチューシャと言っても通じませんよ。
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