▪はじめに
かつて日本の限られた地域で小正月明けに「念仏の口開け」という行事が行われていました。
現代ではほとんど行われなくなり、この行事を知らないという方も多いのではないかと思われます。
そこで今回は、この行事について雑学と併せて詳しく解説していきましょう。
目 次
念仏の口開けとは
念仏の口開けとは、年が明けて初めて念仏を唱える日のことで、毎年1月16日にあります。
念仏の口開けは、12月16日の「念仏の口止め」という日とセットになっている歳時です。
この歳時は、家にお迎えした念仏嫌いの年神様が山に帰り、再び念仏を唱え始めてよいとされる日です。
別名「後生始め」「仏の正月」「仏の口開け」「鉦起こし」とも呼ばれ、地域によっては年明け初の墓参りをしたり仏壇にお餅などのお供え物をしたりして、先祖供養をしています。
▪意味
念仏の口開けには、正月の間休んでいた念仏やお供え物などの仏教行事を解禁するという意味があります。
▪由来
日本では、古来より正月には「年神様」を家にお迎えするという習わしがあります。
この年神様が念仏を嫌うということから神様が家に居る12月16日から年明け後の1月15日の間は念仏を唱えず年神様に手を合わせるという風習があります。
年神様は、小正月である1月15日に行われるどんと焼の炎と一緒に天に帰るとされているため、年神様が帰った後の1月16日が再び念仏を唱えられるようになる「念仏の口開け」となったそうです。
▪イベント
念仏の口開けに関するイベントは、残念ながら見つけることができませんでした。
念仏の口開けの雑学
<「年神様」ってどんな神様?>
「念仏の口止め」で登場する「年神様」。
年神様は念仏が嫌いだから年神様が家にいる間は念仏を唱えない、と聞くと、日本では仏教よりも年神様の方が格上のような感じがしませんか?
そんなに大切にされている年神様とはどんな神様なのでしょうか?
「年神様」とは、正月に地域にある一番高い山から下りてきてその年の1年間家に幸せをもたらすとされている神様で、別名「正月様」「歳徳神(としとくじん)」「恵方様」とも呼ばれている神様です。
じつはこの年神様、天照大御神などのような生まれながらの神様ではなく、亡くなったご先祖様の霊が神様になったものだといわれています。
仏教が伝わる以前の日本では、「祖霊信仰」という先祖の霊が生きている子孫の生活に影響を与えるという信仰がありました。
人は亡くなると、魂が生きていたときに住んでいた家を見下ろせる山に行き、子孫を山から見守ると考えられていました。
その先祖の魂が正月に山から子孫の住む家に下りてきたものが「年神様」です。
ですから、かつての日本では正月はお盆と同じようにあの世から亡くなった人たちの霊が帰って来る日で、正月にはお盆と同じような儀式を行っていました。
それが、仏教が日本に根付いてきたことに伴って儀式の形も少しずつ変わっていき、江戸時代に現代のようなお盆の儀式は仏教が担い、正月の儀式は神道が担うという形が出来上がったのです。
<お坊さんは「念仏の口開け」を知らない?>
「念仏の口開け」は、「念仏」と付くくらいなので当然お坊さんも知っている習慣だと思われがちですが、じつはこの習慣を知らないお坊さんの方が多いのだそうです。
確かに、念仏を唱えてはいけないという期間である12月16日の「念仏の口止め」から1月16日までの1ヵ月間 でも、念仏会を開催しているお寺もありますし、何より除夜の鐘や新年の護摩焚きなどテレビで毎年放送されるほど有名な儀式も期間中に行われています。
これはどうしてなのでしょうか?
「念仏の口止め」や「念仏の口開け」といった習慣は、古いものなので風化して今では行われなくなったからだとも考えられますが、じつは仏教には念仏を唱えてはいけない期間というものはないからなのです。
仏教の教えでは365日眠るとき以外は念仏を唱えるのが基本で、もちろん正月にも念仏を唱えます。
また、「念仏の口止め」や「念仏の口開け」は、日本全国で行われていたものではなく一部の地域でのみ行われていた習慣でした。
ですから、現在のお坊さんが知らなくても当然の習慣といえるのです。
また「年神様が念仏を嫌う」という理由は、「念仏=死者の供養のためのもの」なのでハレの日にふさわしくないという考え方や、正月は日本で大昔から続く年神様を迎える儀式に重きを置くべきだという考え方などから生まれたものではないかといわれています。
「念仏の口止め」や「念仏の口開け」は、仏教に完全に侵食されることなく、日本独自の信仰も守ってきた日本ならではの面白い風習といえるのではないでしょうか。
▪まとめ
念仏の口開けは、私が子供のころに祖母が教えてくれたことを微かに覚えています。
いつもは田舎に帰ったら1番にお仏壇に手を合わせていましたが、年末年始はお仏壇の扉がきっちりと閉まっていたことを不思議に感じたものです。
「念仏の口開け」は現在はほとんど行われることのない習慣ですが、調べてみると日本のご先祖様に対する考え方が垣間見える面白い習慣だと思いました。
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