ヒトリシズカという、少し暗い印象をもつ花の名前。
名前のイメージとは裏腹に、白く美しい花を、野山や森林に咲かせます。
その名前の由来は、日本で有名な偉人と深い関係があったのです。
目 次
ヒトリシズカとは
ヒトリシズカは日本をはじめとして、極東ロシアから朝鮮半島、中国東北部から東部の広い範囲で見られます。
日本では全国各地の野山や森林に、自生しています。
湿り気のある場所を好み、寒さに強い花です。
そのため、森林がある場所で見られることが多く、日陰でも成長します。
暑さに弱い花ではありませんが、直射日光があたる場所よりも、日影がオススメです。
開花時期は4月から5月で、ブラシのような白い花を咲かせます。
害虫や病気に強く、比較的育てやすい花です。
ヒトリシズカの名前の由来
ヒトリシズカは漢字で「一人静」と表記されます。
日本や東アジアで見られるヒトリシズカですが、その名前の由来の起源は、平安時代の日本です。
平安時代の武将である源義経の愛人として有名な、関係しています。
雨が降らない日が続いたため、後白河法皇が僧にお経を読ませ、容姿端麗な白拍子(しらびょうし)に舞をおどらせました。
しかし、一向に雨が降ることはありませんでした。
そんな中、静御前が1人舞をおどると、その後3日間雨が続いたと言われています。
ヒトリシズカの花が咲いた様子は、美しい静御前が舞を1人踊る姿のように見えたため、この名前がついたとされています。
一方で、フタリシズカという花との対比で、ヒトリシズカの名前が広がったという説もあります。
フタリシズカは、静御前とその霊が舞う様子を描いた謡曲「二人静」からつけられたそうです。
どちらの説も、ヒトリシズカという花の名前には、容姿端麗な静御前が関係していたのですね。
ヒトリシズカの学名は「Chloranthus japonicus」です。
「Chloranthus」は、ヒトリシズカの科名と属名である、センリョウ科チャラン属を表します。
「japonicus」は、「日本の」や「日本固有の」という意味をもつため、日本や東アジア原産の花であることからつけられたのでしょう。
ヒトリシズカが誕生花となる日にち
1月9日、2月4日
ヒトリシズカの花言葉
「隠された美」「愛にこたえて」がヒトリシズカの花言葉です。
名前の由来と言われる、静御前はとても美しい女性であったと言われています。
そんな静御前は、源義経の愛人であったため、隠された存在でした。
そのため、「隠された美」という花言葉がついたのでしょう。
また、静御前は源義経の子供を身ごもりましたが、男の子であったため、子供の命を絶つように命じられたそうです。
愛する人の子供を身ごもっても、所詮は愛人であったため、源義経は静御前の愛にこたえられなかったのでしょう。
ヒトリシズカの花言葉は、まさに静御前を表しているようですね。
ヒトリシズカの色別の花言葉
ヒトリシズカの花の色は白一色ですので、色別の花言葉はありません。
ヒトリシズカの怖い花言葉
ヒトリシズカには怖い意味の花言葉はないようです。
ヒトリシズカの別名と由来
ヒトリシズカには、別名がいくつか存在します。
まずは「吉野静(よしのしずか)」です。
「吉野静」という名前は、観阿弥作が作ったとされる能「吉野静」が関係しています。
能「吉野静」は、源義経が衆徒(しゅうと)から逃げるのを、家臣の佐藤忠信と静御前が、手助けするという話。
吉野山で静御前が美しい舞を踊った姿と、花の美しい様子が似ていたため、「吉野静」と名付けられたとされています。
他にも、花の形が、眉を整える、ブラシのように見えたことから「マユハキグサ」とつけられました。
「蛍草(ほたるそう)」、「次嶺(つぎね)」、「及己(ぎゅうい)」などといった別名があります。
人里はなれた野山や森林に、ひっそりと美しい花を咲かせるヒトリシズカ。
その名前は、静御前という1人の美しい女性の姿を由来としていたのですね。