しだれるように白い花を咲かせるウツギは古くから日本で愛されてきた花です。
初夏の風に揺れるその姿はとても爽やかで涼しげです。
目 次
ウツギとは
ウツギ(空木、卯木)はアジサイ科ウツギ属の落葉低木です。
元々はユキノシタ科に分類されていましたが、1980年代に新しくアジサイ科として分類されるようになりました。
山野にも自生し、観賞用の庭木や生垣としても見かけられます。
樹高は1~2.5mほどになり、枝は生長すると中が空洞になります。
花期は5~7月頃で枝先に1~1.5㎝ほどの白い小花を垂れ下がるようにたくさんつけます。
ウツギの名前の由来
ウツギは枝が中空であることから「空ろ(うつろ)な木」と言う意味で「空木」と漢字で書くようになりました。
別名では「ウノハナ(卯の花)」とも呼ばれていますが、これは「ウツギの花」を略したものという説や卯月(旧暦の4月で現在の5月頃に当たる)に花が咲き始めることからついたという説があります。
食べるおからのことも卯の花と言いますが、それとはあまり関係はなさそうです。
でも、食べる卯の花も白くポロポロしていてウツギの花に共通するところがありますね。
また、あまり知られていませんが、「ユキミグサ(雪見草)」と呼ばれることもあります。
白い花が枝に積もる雪のように見えるからです。
ウツギが誕生花となる日にち
4月14日、5月19日、6月4日
ウツギの花言葉
ウツギの花言葉は「古風」「風情」「秘密」「乙女の香り」です。
「古風」「風情」の花言葉は白く上品な花姿や古くから日本では和歌などで詠まれ、親しまれてきたことからついたようです。
万葉集の中にもたくさんウツギの花が登場しますが、多くが「卯の花」の呼び方で詠まれています。
「秘密」の花言葉は見た目は普通の枝なのに、実は中が空洞になっているというウツギの特徴からきているようです。
枝を切ってみると本当にストローのように見事に空洞になっているので面白いですね。
「乙女の香り」の花言葉はウツギが咲き始める頃に「早乙女」といわれる田植えをする若い女性がよく見かけられたことからつきました。
当時、早乙女になることは神に奉仕することとされていました。
ウツギの色別の花言葉
ウツギは代表的な白色以外に白と濃いピンク色が混ざった絞り模様のものもありますが、色別の花言葉は特に無いようです。
この白と濃いピンク色が混ざったものはウツギの交配種でサクラウツギ(桜空木)と呼ばれています。
ちなみに赤色をしたベニウツギ(紅空木)と呼ばれるものもありますが、これはスイカズラ科で本来のウツギとは別の植物になります。
ウツギの怖い花言葉
ウツギの怖い花言葉は特に無いようです。
ウツギの花と唱歌
日本の唱歌の中には花がよく登場してきます。
例えば、「夏が来れば思い出す はるかな尾瀬」の出だしから始まる有名な日本のの歌「夏の思い出」という歌は水芭蕉(みずばしょう)の花が歌詞の中に出てきます。
これ以外にもうひとつ夏の唱歌で代表的な「夏は来ぬ(なつはきぬ)」という歌があります。
「来ぬ」は「来た」という意味で、夏が来たことを歌っているのですが、この歌の中にウツギの花が出てきます。
「夏は来ぬ」は佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲で作られ、1896年に発表されました。
2007年には日本の歌百選にも選ばれています。
この歌の中ではウツギの花は「卯の花」と表現され、ウツギが咲き始める初夏を表す季語がたくさん出てきます。
例えば一番の歌詞では
「卯の花の 匂う垣根に 時鳥(ほととぎす)早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ」と歌われています。
卯の花と初夏に渡ってくるほととぎすが出てきます。
また二番の歌詞では
「五月雨(さみだれ)の そそぐ山田に 早乙女(さおとめ)が 裳裾(もすそ)ぬらして 玉苗(たまなえ)植うる 夏は来ぬ」
こちらは五月雨、早乙女がウツギが咲く5月の様子を表現しています。
このようにウツギは日本の古き良き時代を感じさせてくれる花なのです。