スクリューのようなユニークな花姿をしているネジバナは古くから日本で多く分布し、万葉集の中にも登場してきます。
目 次
ネジバナとは
ネジバナ(捩花)はラン科ネジバナ属の多年草です。
主に日本全土、海外でも東アジア、サハリン、ユーラシア大陸、オセアニアなどに世界各国に分布しています。
6月下旬~7月頃にピンク色の小花が直立した茎に下から上へと螺旋状に巻きつくように咲きます。
左巻き、右巻きのものがあり、比率としては大体、1:1位のようです。
しかし、まれにねじれず、茎の片側に並ぶように花をつけるものもあります。
別名「モジズリ(捩摺)」「ネジリソウ」とも呼ばれています。
主にピンク色のものが多いですが「シロネジバナ(シロバナモジズリ)」という名の白い花を咲かせる種類もあります。
また南西諸島や伊豆諸島辺りに分布する「ナンゴクネジバナ(南国捩花)」は鹿児島県では絶滅危惧種Ⅱ類に指定されています。
淡いピンク色の花を咲かせますが、ネジバナと違って茎や花に毛が無いのが特徴です。
ネジバナの名前の由来
「ネジバナ(捩花)」の名前は見ての通り、花が茎にねじれるように巻き付いて咲くことからつきました。
別名の「モジズリ(捩摺)」は「しのぶもじずり(信夫捩摺)」というねじれ模様の織物に似ていることからつきました。
英語名では「Lad‘y tresses」と呼ばれ「婦人の編んだ髪」という意味があります。
また「小町蘭(こまちらん)」という呼び方もあるようです。
ネジバナが蘭科で小さくて可愛い花を咲かせることからついたのでしょう。
ネジバナが誕生花となる日にち
7月4日
ネジバナの花言葉
ネジバナの花言葉は「思慕(しぼ)」になります。
「思慕」とは字のごとく、思い慕うことで、これは以下の万葉集の歌が由来とされています。
「芝付けの 御宇良崎なる 根都古草 逢い見ずあらば 我恋めやも」
根都古草(ねっこぐさ)とはネジバナのことだそうです。
訳すと「あなたに逢うことがなければ 私は恋に悩むこともなかったのに」という内容の歌になっています。
ネジバナがぐるぐると茎に巻きつく姿が好きな人のことをあれこれ思い巡らせることに結び付けられたのではないでしょうか。
ネジバナの色別の花言葉
ネジバナはピンク色以外に白色の花もありますが、色別の花言葉は特に無いようです。
ネジバナの怖い花言葉
ネジバナの怖い花言葉は特に無いようです。
ネジバナの言い伝え
ある地方ではネジバナが咲き終わると梅雨が終わるという言い伝えがあるようです。
咲き終わるというのは枯れるとかではなく、ネジバナは下から上へと螺旋状に伸びながら咲いていくので、それが上まで到達して咲き終わったらという意味のようです。
また、百人一首ではネジバナにまつわる以下のような歌があります。
「みちのくの しのぶもじずり だれゆえに 乱れそめしに 我ならなくに」
これは源融(みなもとのとおる)が詠んだ恋の歌で「しのぶもじずり(ネジバナ)のように私はあなたのせいで心乱れています」という内容の歌です。
源融は百人一首では河原左大臣という名で歌を詠んでいます。
また「源氏物語」の主人公である光源氏の実在モデルだったのではないかという説もあります。
そのような説があるくらいなので恋多き人生だったのでしょうか。
しかし、彼には「本朝神仙伝」にも収められている有名な伝説があります。
そこには源融は仙人に成りそこねた人物ということが書かれています。
源融は仙道の道を進んでいた近侍に一緒に仙境へ行こうと誘われます。
その話に興味を持った源融は妻子に承諾を得てから行くと答えます。
しかし、妻子を気にしているようでは仙道はむいていないと言われ、その話は無かったことになりました。
仙人にはなれなかったですが、一途に妻を愛し、家族を大切にしていたことがよくわかりますね。