海辺に咲くシオンの花、ハマシオンは高く真っすぐに伸び、薄紫色の花を咲かせます。
高貴さと伸びやかさを兼ね備えているのが魅力です。
目 次
ハマシオンとは
ハマシオンはキク科シオン属の二年草です。
中国、朝鮮半島、シベリア、ヨーロッパ、アフリカなどに分布しています。
日本では主に太平洋沿岸の湿地に自生しています。
近年では海岸の埋め立てにより減少しているため、絶滅を危惧されています。
9~11月頃に花びらが紫色で中央が黄色の花を咲かせます。
高さは約1mほどになり、茎は真っすぐに伸び、赤みを帯びています。
別名「ウラギク(浦菊)」とも呼ばれています。
ハマシオンの名前の由来
ハマシオン(浜紫苑)の名前は字のごとく、シオン属の「紫苑」の花に「浜」がついたものです。
「紫苑」という名前の由来は花びらが紫色であることと「苑」は植物が群生している様子を表していることからきています。
そして、浜紫苑の「浜」は沿岸に咲くことが多いことが由来のようです。
「ウラギク(浦菊)」の名前は菊のような花姿と「浦」は「海岸」という意味があることからきているのではないでしょうか。
シオン属の学名である「Aster(アスター)」はギリシャ語で「星」という意味があります。
これは花びらが放射状であることが由来となっています。
ハマシオンが誕生花となる日にち
9月9日
ハマシオンの花言葉
ハマシオンの花言葉は「追憶」「君を忘れない」「遠方にある人を思う」です。
これらの花言葉は以下のような日本の説話が由来となっています。
平安時代末期にあった説話集「今昔物語集」の中に紫苑が登場しています。
「今は昔、あるところに二人の男子がいました。
ある時、父親が死んでしまい、二人は大変嘆き悲しみ、何年も忘れることが出来ず、何度も墓に行っていました。
やがて、兄は日々の忙しさと父親のことをなかなか忘れられないことが辛くなり「見る人の思いを忘れさせる」といわれる「萱草(かんぞう)」という忘れ草を墓の辺りに植えました。
しかし、弟は父親のことは絶対に忘れたくなかったため「見る人の思いを忘れさせない」といわれる「紫苑(しおん)」という草を墓の辺りに植えました。
その弟の思いに感心した鬼は彼に予知夢の力を与えたということです。」
このことから紫苑は「鬼の醜草(オニノシコグサ)」とも呼ばれています。
また、海外では以下のようなシオン属の花言葉もあります。
「patience(忍耐)」や「daintiness(優美、繊細)」、「symbol of love(愛の象徴)」
「忍耐」の花言葉の由来ははっきりしたことはわかっていません。
ただ、シオンは根や茎が薬草としても利用されており、鎮咳去痰作用などがあるため、そのことと関係しているかもしれません。
「優美、繊細」「愛の象徴」の花言葉は放射状の紫色の美しい花がたくさん咲く様子からきているのではないでしょうか。
ハマシオンの色別の花言葉
ハマシオンは紫色の他に白色もあるようですが、色別の花言葉は特に無いようです。
ハマシオンの怖い花言葉
ハマシオンの怖い花言葉は特に無いようです。
紫苑と日本の歌人
紫苑は和歌や俳句の世界では秋の季語になり、日本でもよく詠われてきました。
与謝野晶子の短歌より
「紫苑(シオン)咲く わが心より 上りたる 煙のごとき うすいろをして」
「思ひ出づや 紫苑一(シオンひと)もと 大ぞらの 雲より高く 立ちし草むら」
どちらの歌も紫苑が秋空に向かって高く伸びている光景が目に浮かびますね。
与謝野晶子は代表作の「みだれ髪」など恋を詠んだ歌が多いですが、これらの歌では紫苑の清々しさが表現されています。
正岡子規の俳句より
「淋しさを 猶(なお)も紫苑の 伸びるなり」
これは結核で闘病中だった彼が、家から外を眺めた時に咲いていた紫苑を見て詠んだ俳句といわれています。
きっと紫苑の伸びやかさがうらやましくもあったのではないでしょうか。