北は北海道、南は九州に分布するワレモコウ。
昔はどこにでも生息していましたが、近年は減少しています。
細長く伸びた茎の先に赤茶色の花穂が風になびくと、秋を感じさせます。
そんなワレモコウは源氏物語にも登場する花でした。
目 次
ワレモコウとは
日本やアジア、北米、ヨーロッパなど幅広い地域が原産のワレモコウ。
アラスカなどでは帰化植物として扱われます。
日当たり良好な野山などに自生していると言われていますが、日本では減少傾向です。
バラ科ワレモコウ属の多年草で、草丈は大きいもので2m近くにまで成長します。
花は6月から9月にかけて見ごろをむかえ、赤茶色の花穂が特徴です。
ワレモコウには花びらがなく、花びらのように見えるのはガクです。
4枚のガクが花の形をつくり、4つのおしべが出てきます。
それらが、いくつも集まり、花穂になるのです。
冬には地上の部分が枯れ、翌年にはまた芽がでます。
ワレモコウの名前の由来
ワレモコウとは和名で、複数の由来があると考えられています。
由来の違いによって、あてられている漢字も異なります。
ワレモコウ自体が、赤茶色の花であることから、「吾もまた紅なり」言ったことで、「吾亦紅」と言われたという説です。
また、花に香りがあり、この香りを中国の皇帝が気に入ったことから、「吾も請う」と言ったことで、「吾木香」となったと考えられています。
他にもワレモコウの花が、木瓜文という家紋を半分にしたような形に見えることから、名づけられたとも言われています。
学名は「Sanguisorba officinalis(サンギソルバ オフィシナリス)」です。
「Sanguisorba」とは元々、ラテン語から由来し、血や吸血するなどの意味を持ちます。
ワレモコウの花の根は止血効果があることから、つけられました。
また「officinalis」には、薬用効果のあるといういみがあるそうです。
西洋では「Great Burnet(グレート バーネット)」と呼ばれます。
ワレモコウが誕生花となる日にち
8月25日、10月28日、10月30日、11月19日
ワレモコウの花言葉
「移ろい」「変化」「移ろい行く日々」「もの思い」「憧れ」「愛慕」などが花言葉です。
日常がどんどんと変化していく様子を表す花言葉が、多くつけられているワレモコウ。
花穂の下から段々とガクが開いていくため、つけられているそうです。
「もの思い」「憧れ」「愛慕」などは、細い茎が風に吹かれる姿が、哀愁ただようことからつけられました。
ワレモコウの色別の花言葉
ワレモコウの花色は赤茶色のみです。
そのため花色別の花言葉はありません。
ワレモコウの怖い花言葉
赤茶色の花穂がどこか、哀愁を漂わせるワレモコウ。
花が下から上へと変化することから、「移ろい行く日々」などという少し悲しい印象を受けます。
しかし、怖いイメージの花言葉などはつけられていません。
ワレモコウと源氏物語
生息地域が減少しているワレモコウですが、昔は全国各地で生息していました。
古くから日本に分布していたことで、源氏物語にも登場します。
「老いるを忘るる菊に、おとろへゆく藤袴、ものげなきわれもこう」
この一説は、老いることを知らない菊、どんどんと衰えてしまう藤袴、質素で見栄えのない吾亦紅という意味があり、3つの花を対比しています。
ワレモコウは他の花のようは華やかな花色ではありません。
赤茶色の落ち着いた花色で、目立たないことが、魅力的であり源氏物語にも登場したのでしょう。
源氏物語以外にも、正岡子規や若山牧水などの句で、秋の季語として詠まれています。
そんなワレモコウは、薬草や生薬として、人々の健康を支えてきました。
止血効果や炎症を押させる効果などがきたいできるため、止血剤や火傷、湿疹の治療などに使われます。
民間療法では、うがい薬として重宝されることがあります。
初夏から見ごろをむかえるワレモコウですが、秋の季語です。
赤茶色の花穂が、どこか移ろう日々を感じさせ、少し寂しさを思わせます。