「1月11日 塩の日」
■はじめに
筆者は健診で「高血圧患者」とされ、重篤化するとああなる、こうなると脅かされ、まだ食事療法で大丈夫と諭されて、塩分摂取の日々の注意なる講義を聞かされて暗澹たる思いをしました。
「おいしい」と「減塩」は絶対に両立しません。
目 次
塩の日とは
上杉謙信が終生のライバル武田信玄に塩を届けたのが1569(永禄11)年1月11日だったことから、どういう経緯かは不明ですが、現在、この日は「塩の日」と言われています。
この故事から、「争いの本質ではない部分については、敵であっても弱みにつけ込まずに援助する」ことを「敵に塩を送る」と言いますが、近いうちに日韓トラブルのキーワードになりそうな気もします。
■塩の日の意味と由来
塩を送った一件は美談として伝わっており、感謝のしるしとして信玄が謙信に贈ったとされる「塩留めの太刀」が東京国立博物館に所蔵されているので、塩が届いたのは間違いない史実のようです。
しかし、ドンパチ交戦中の信玄の陣地に届いたわけもなく、いくら「義」を重んじる謙信でも、そんな甘いことでは戦国の世を生き抜くことはできません。
事の起こりは、信玄が京へ上るため、今川・北条との同盟を解消して東海地方へ進出しようとしたことです。
信玄の武田領信濃に海はなく、塩は東海と謙信領の越後から調達していましたが、当然、今川・北条は塩をはじめ、全ての物流を止めてしまいます。
信玄と謙信は思い出したようにドンパチを繰り返していましたが、経済を重視する謙信は政経分離の方針で、信濃との物流は維持しており、信濃では北陸産の塩も流通していました。
ここで越後からの物流も止めてしまえば、信玄の息の根も止まるところでしたが、謙信は「信玄と争うところは弓箭(きゅうせん=戦のこと)にある。米や塩ではない」として、物流を維持するようお触れを出しました。
これが「敵に塩を送る」の由来で、正に謙信のお触れがこの言葉の意味を指し示していますね。
■塩の日のイベント
かつての武田領、現在の松本市では塩の故事は「義塩伝説」として伝えられており、
江戸時代の初期を起源として、塩の届いた1月11日には「あめ(飴)市」が開かれ、現在では日本各地からあめの銘品、珍品が集結、上杉・武田軍の綱引き「塩取合戦」「時代行列」をはじめ、多彩な企画とまだ抜け切らぬ正月気分が相まって盛り上がっています。
当然、「どうして塩があめ市になるんだよお」というツッコミが入ると思います。
なんでも当初はやはり「塩市」と呼ばれていたそうですが、松本はもともと飴屋が多く、あめの屋台ばかりが目立ったため、いつの間にか名称変更になったとも言われていますが、これもアテになる話ではありません、悪しからず。
塩の日の雑学
▽ナメクジ、塩、浸透圧
ナメクジに塩をかけると溶けてしまうことは、みなさんご存知だと思いますが、正確には溶けるのではなくて、縮んでしまうんですね。
これは塩がナメクジの体表粘膜によって濃い食塩水となるため、体内の薄い食塩水である体液がどんどん体外に吸い出されて縮んでしまうことになります。
これは「浸透圧」による現象で、半透膜(この場合は粘膜)を挟んで、濃い溶液と薄い溶液を接触させると、同じ濃度になろうとして、濃いほうが薄いほうを吸収しようとします。
ナメクジはこのため体液が失われ縮みますが、死ぬ手前でたくさん水をかければ、外から水分を吸収するので助かるはずです。
これは砂糖でも同じ現象が起き、また、人間にも浸透圧は発生するので、一気に200gも塩を摂取すれば、縮みはしませんが死にます。
沈没から生き延びても海水を飲んではならん、というのはそのためです。
徴兵検査で落とされるために、事前に醤油をたくさん飲むという逸話も、この浸透圧の平和利用と言えるでしょうか。
身近な話では、塩漬けによって野菜の水分が外に出される漬物も浸透圧を利用したもので、淡水魚を海水に放り込むと死んでしまうのもこのせいですね(当然、海水魚の逆バージョンもあります)。
▽清めの塩
先日、筆者が参列した葬儀では清めの塩が手渡されませんでした。
前回の葬儀はずいぶん前のことなので記憶も曖昧ですが、玄関で塩を振ってもらった気もします。
そもそも、なぜ清めの塩があるかと言えば、死は穢れたものとする神道の考えからで、故人を手厚く供養する仏教とは相容れないはずです。
そのため、最近では清めの塩を配らない葬儀社が増えているそうで、筆者参列の葬儀は配らない派の葬儀社だったんですね。
■最後に
越後から信濃へ塩を運んだ「塩街道」は、今の新潟県糸魚川から松本盆地に至る千国街道で、JR大糸線とほぼ同じルートです。この塩街道の終点には「塩尻」の地名がつけられていますね。
この千国街道は現在、多くのトレイルコースが設定され、昔の姿をそのまま残す古道の景観が楽しめるそうですよ。
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