「9月13日 司法保護記念日」
■はじめに
今日はとうの昔になくなってしまった記念日を紹介します。
記念日の発掘調査といったところでしょうか。
目 次
司法保護記念日とは
明治天皇崩御による大喪に伴い恩赦の詔勅が出されたことで、釈放されていきなり世の中に放り込まれた人たちを保護する運動が始まりました。
どういうわけか13年後の1925(大正14)年、この恩赦が行われた9月13日を「保護デー」に制定しましたが、天皇崩御から説明しないと何の「保護」だかさっぱりわかりません。
その後、1937(昭和12)年に「司法保護記念日」と改称されましたが、「司法保護」でもまだ趣旨が不明です。
しかし、その「司法保護記念日」も1952(昭和27)年に「少年保護記念日」と統合され、11月27日の「更生保護記念日」に衣替えとなりました。
「司法保護記念日」の看板が消えてから70年近く経ち、もうこの日を思い出す人はいなくなりました。
■司法保護記念日の意味と由来
時は明治の半ば、10年の刑を終え、「2度と悪事に手を染めません」と誓って静岡監獄を出所した元悪党がおりました。
喜び勇んで昔懐かしいわが家にたどり着いてみれば、10年前と変わらないのは庭の柿の木ばかり、かつてのわが妻はもはや他人妻。
おまけに小憎らしいガキ3匹と家族団欒、水入らず。
涙、涙で迎えるはずの父母もどうやら墓の下。
しょんぼり肩を落として親類縁者を訪ねてみれば、「おまえみたいな悪党は知らん」と、一夜の宿どころか塩までまかれる始末。
昔は肩で風切って歩いた村の夜道を、今度は肩を落として歩くわが身のみじめさかみしめながら、手っ取り早く夜露をしのぐには留置場が一番と警察署に出向いてみても「刑を全うした者は警察の中に入れるわけにはいかん」と、まるで相手にされず。
こうなりゃ、「昔取った杵柄」と日本語の思い違いもものかは、寝静まった丑三つ時、押し込み強盗朝飯前とばかり、手ごろな家を物色して歩いていたが…。
そこへ脳裏に浮かぶ副典獄(副所長)の優しい眼差し、自分を真人間に導いてくれた大恩人の顔。
何があっても副典獄との約束は破れない、破れない。
あわれ、この元悪党は副典獄へ遺書を残し、村外れの池へ入水して生涯を閉じてしまいました。
この知らせを受けショックで寝込むと思いきや、さすが人格者の副典獄、地元の名士、篤志家、大金持ちに声をかけまくり、
「社会で適切な処遇をしてあげれば再犯も防げ、また元悪党も善良な社会人として自立できるので、これによって世の中も安全になり、公共の福祉を増進する」(筆者訳)
として、静岡県出獄人保護会社を1888(明治21)年に設立しました。
その後、仏教教団やキリスト教信者などによって、全国各地に同様の団体の設立が続くことになります。
日本の更生保護事業はこうして民間が担って始まり、1939(昭和14)年の司法保護事業法によって正式に国の制度として位置付けられました。
■司法保護記念日のイベント
行事は11月の「更生保護記念日」前後に様々な催しが行われるそうですが、さすがに「本年度最優秀更生賞」なんてものはなく、保護司さんを表彰しているようです。
司法保護記念日の雑学
▽戦後の恩赦
恩赦は日本国憲法第七十三条中にある「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること」によって、内閣の閣議で決まります。
恩赦は奈良時代から始まったとされていますが、戦後の新憲法下での恩赦は次の通り(計11回、かっこ内は恩赦対象人数)。
・1945年10月、第2次世界大戦終戦(42万4425人)
・1946年11月、日本国憲法公布(16万9874人)
・1952年4月、サンフランシスコ講和条約発効(100万6628人)
・1956年4月、国際連合加盟(7万1782人)
・1959年4月、皇太子結婚(4万8738人)
・1968年11月、明治100年(15万2818人)
・1972年5月、沖縄本土復帰(3万4503人)
・1989年2月、昭和天皇大喪の礼(約1017万人)
・1990年11月、天皇陛下即位の礼(約250万人)
・1993年6月、皇太子結婚(1277人)
・2019年10月、天皇陛下即位の礼(約55万人)
終戦直後の恩赦は戦争犯罪人が多く、その後の恩赦対象人数のばらつきは世論に対する政府の配慮によると思えます。
しかし、よく考えてみれば、恩赦制度は司法の判断(量刑)を行政が変更することになるため三権分立に反し、憲法第七十三条は矛盾していると思えます。
また、直近3件の恩赦に浴したのは、多くが公職選挙法違反者だったため、政治恩赦との批判を浴びています。
■最後に
令和の天皇即位の恩赦について時事通信の調査では、54.2%の人が反対で、賛成の20.5%を大きく上回っていました。
政府は「更生の意欲を高め、社会復帰を促進するため」と言っていますが、どうして慶事が更生や社会復帰につながるのか、筆者には理解の及ばぬところであります。
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