秋の果物を代表する梨は甘くて瑞々しく、とても美味しいですね。
日本でも人気のある果物ですが、梨の花はあまり見たことがないという方も多いのではないでしょうか。
目 次
梨とは
梨はバラ科のナシ属で落葉高木です。
木の高さは約15mほどにもなり、葉は12㎝ほどの卵型で艶があり、縁はギザギザしています。
花期は4月頃で葉と同時期に5枚の花びらをつけた白い花を咲かせます。
9月~11月頃になると黄褐色や黄緑色の食用の果実がなります。
同じバラ科のリンゴと大きさも似て、果肉は白く水分を多く含みます。
梨の名前の由来
梨の名前の由来はいくつかの説があります。
まず一つ目は梨の中心部が酸っぱいことから「中酢(なかす)」がなまって「なし」となった説です。
二つ目は梨の果肉が白いことから「中白(なかしろ)」が略され、「なし」になった説です。
そして三つ目は梨は風があると実らない果物で「風無し」が「なし」になったという説があります。
どの説も言葉が変化していったところが共通していますね。
梨が誕生花となる日にち
4月20日、4月30日
梨の花言葉
梨の花言葉は「愛情」「慰め」「癒し」です。
「愛情」の花言葉ですが、梨は白くて可愛らしい花期を楽しませてくれた後、今度はたくさん実をつけてくれます。
そういえば秋には梨狩りができる所も多くありますね。
美しい花とたわわに実る梨の姿が豊かな愛情を感じさせてくれることからついたと言われています。
「慰め」「癒し」の花言葉の由来は正確には梨の木の花言葉のようです。
中国では古くから梨はとても愛されてきた植物で、人々は梨を鑑賞して心を癒し、慰められてきたことが由来となっています。
唐の第9代皇帝だった玄宗は梨の庭園で宮廷に仕える人を集めて音楽や舞踊などを指導したり、自らも役者となって演劇を楽しんでいたそうです。
そしてこの演劇を練習していた人達は「皇帝梨園弟子」と呼ばれていました。
現在、日本の歌舞伎界でも「梨園(りえん)」という言葉がありますが、これも中国から伝わってきたそうです。
このように中国では梨は人々にとって癒され、時には慰められる大きな存在であったようです。
日本人が桜を愛し、花見などで桜を愛でるのと似たような感じですね。
梨の色別の言葉
梨の花の色別の意味は特にないようです
梨の怖い花言葉
梨には怖い花言葉も特にないようです。
梨の言い伝え
日本では昔の人は梨が「無し」で縁起が良くない為、庭木にするのを避けたり、敢えて「有りの実」と縁起の良いように言い換えて呼ぶことがあったそうです。
梨はこのように日本ではあまり良いイメージがなかったようで、それは清少納言の「枕草子」からも読み取ることが出来ます。
第三十七段「木の花は」の中で、清少納言は紅梅や藤や橘の木の花のことは褒めているのですが、梨の花に関しては良いように書かれていない文があります。
「梨の花 よにすさまじきものにして 近うもてなさず はかなき文つけなどだにせず。愛敬おくれたる人の顔などを見ては たとひに言ふも げに 葉の色よりはじめて あいなく見ゆるを」(一部抜粋)
現代語訳すると以下のようになります。
(梨の花などは全く趣がなく、身近で重宝されることもなく、手紙につけることもしない。愛敬のない人の顔には例えられることはあるが、なるほど、葉の色からして、面白くなく見える。)
ここまで読むと梨があまり良い評価をされてないのでかわいそうな気もしますが、実はこの続きがあります。
中国では梨の花は賞賛されていて、雨に濡れた梨の花が美しい楊貴妃の涙に例えられています。
清少納言はその理由を解くため、梨の花を近くでよく観察してみたのです。
そして、花びらの端にほんのりと薄紅の色がついているのを見てその美しさに気付いたという内容が続いて書かれています。
このように昔の人は梨を全て否定しているわけではなく、名前を「有りの実」とポジティブに言い換えてみたり、見方を変えてみたりして梨の良さを引き出そうとしていたのではないでしょうか。