酉の刻は時間や方位を表す時法とされているのですが、皆さんはご存知ですか?
あまり聞かない言葉ですが、日本や中国の史書を見る場合、この酉の刻などが時間を表す言葉として使われている場合や方位を示す言葉として使われている場合があります。
歴史に触れる機会が多い人は目にすることが多いと思いますが、時法のひとつでもある酉の刻についてご紹介したいと思います。
目 次
酉の刻とは
酉の刻は十二時辰の一つです。
この十二時辰は陰陽道がルーツとされ、中国の古い歴史や日本の古い歴史の中ではこの十二時辰が使われることが多かったとされています。
十二時辰とは1日をそれぞれ2時間ずつに分け12等分したものです。
しかし、このままでは、それぞれの2時間の時間帯の区切りが覚えにくいため、普段の生活からも馴染みの深かった十二支を振り分けたものです。
そのため、酉の刻以外にも子の刻や丑の刻、虎の刻などが存在します。
酉の刻は十二支の順番からもわかるように、10番目の刻となります。
十二支の読み方
酉の刻は酉の刻と書かれる以外にも酉字と書かれる場合があります。
この二つの読み方はそれぞれ「酉の刻(とりのこく)」と「酉字(ゆうじ)」と読みます。
どちらかというと、酉字よりも酉の刻の方が使われていることが多いので、ぜひ合わせて覚えていただけたらと思います。
十二時辰の名称
さらに、十二時辰にはそれぞれ名称が存在します。
酉の刻や酉字と書かれていることが多いのですが、こちらの十二時辰のそれぞれの名称で日本の史書や中国の史書に書かれている場合があります。
この名称ではそれぞれの時間帯がわかりやすい名称がつけられているのですが、鳥の刻の名称は日入(にちにゅう)となっています。
これは日没を指す言葉で、朝の日出の反対の意味合いとして日が入る(暮れる)、「日入」という言葉が使われています。
酉の刻とは何時
次は気になる酉の刻の時間帯についてご紹介したいと思います。
最初にもご紹介したように、鳥の刻は十二時辰の一種で1日の時間を12等分したものです。
しかし、最初の刻でもある子の刻は12時から始まりと考えてしまいがちの人も多いのですが、子の刻の始まりは23時からで、23時から1時までの時間となっています。
そのため、子の刻が23時から1時、丑の刻が1時から3時というように順番通りに行くと酉の刻は「17時から19時」となります。
このことからもわかるように、酉の刻とは17時から19時までの2時間の間を指します。
酉の刻の時間にご飯を食べると史書に書かれていた場合は17時から19時の間にご飯を食べたという意味になります。
初刻(しょこく)
次は初刻・正刻・終についてご紹介したいと思います。
初刻・正刻・終とは十二時辰の時間帯をさらに細かく表した言葉です。
初刻とは十二時辰の中でも初めの時間帯を指す言葉で、酉の刻の初刻は17時になります。
正刻(せいこく・しょうこく)
次にご紹介するのは正刻です。
正刻とは十二時辰でも真ん中の時間帯を指す言葉です。
酉の刻の正刻は18時になります。
さらに続いて終は初刻や正刻の流れからもわかるように、十二時辰でも最後の時間帯を指す言葉です。
酉の刻の終は19時となります。
しかし、実はこの終はあまり使われる機会が少ないです。
というのも、お気づきの方もいるかと思いますが、終は次の十二時辰の初刻と被っています。そのため、どちらかというと次の十二時辰の初刻を使う方が多いです。
2小時
次は2小時についてご紹介したいと思います。
2小時は初刻や正刻のように時間帯をさらにわかりやすくした言葉です。
2小時はそれぞれ十二支と「初」と「正」がつけられ、酉の刻の場合では酉初と酉正となります。
2小時はそれぞれ1時間ずつの時間を表す言葉となっています。
酉の刻の「酉初」は17時から18時の間になります。
酉の刻の「酉正」は18時から19時の間になります。
3刻
次にご紹介するのは3刻です。
3刻とは十二時辰のそれぞれ2時間を3つの時間帯の区切りに振り分けたものです。
この時間帯の区切りはそれぞれ上刻・中刻・下刻と分かれており、2時間を3等分していることから40分ずつの時間となっています。
「酉の上刻」は17時40分になります。
「酉の中刻」は18時20分になります。
「酉の下刻」は19時になります。
酉の刻の3刻は上記のようになっています。
4刻
次にご紹介するのは4刻です。
4刻とは3刻の流れからもわかるように、十二時辰の2時間の時間帯をそれぞれ4等分した時間の表し方となっています。
4刻ではそれぞれ一つ・二つ・三つ・四つと読みますが、各30分ずつの区切りです。
「酉一つ」は17時から17時30分の間になります。
「酉二つ」は17時30分から18時の間になります。
「酉三つ」は18時から18時30分の間になります。
「酉四つ」は18時30分から19時の間になります。
例えば、酉の四つ時の時間に仕事から帰ると史書に載っていた場合は18時半から19時の間に帰るというような意味合いになります。
3刻や4刻は頻繁に使われていることが多いので、ぜひ覚えておいていただけたらと思います。
正刻の鐘とは
次は正刻の鐘についてご紹介したいと思います。
正刻の鐘もあまり馴染みに少ない言葉で、初めて聞いたという方も多いかもしれませんが、正刻の鐘も十二時辰と関りが深いものです。
今でこそ多くの人が携帯や時計を身に着け時間が常にわかる状態となっていますが、昔は歴史の本からもわかるように、時間がわかりづらい日常を過ごしていました。
時計があったとしても、富裕層や上流階級、お寺の住職しか持つことが許されていなかった時代もあり、なかなか正確な時間を知ることができなかったとされています。
そこでお寺の方が時間をみんなに知らせるために十二時辰の書く時間帯に正刻の鐘を鳴らして知らせたとされています。
正刻の鐘も時間を知らせる鐘だという合図でまず3回鐘を鳴らします。
そのあと、十二時辰のそれぞれ定められた回数を鳴らして伝えました。
子の刻の場合は鐘の回数を九つ、丑の刻の場合では八つというように1回ずつ回数を減らすのですが、午の刻以降の3回からはわかりづらいので、再度九つの回数に戻ります。
そのため、酉の刻の場合は正刻の鐘を六つ鳴らして伝えていました。
酉の刻は日の暮れる時間帯でもあるため、史書などでは時間が分かりやすいように暮六つの鐘が鳴ったというような表し方をすることが多いです。
酉の刻の方角は
次は酉の刻の方角についてご紹介したいと思います。
十二時辰はそれぞれ時間を表す言葉として使われることが多いのですが、時間以外にも方角を示す言葉として使われていました。
この方角についても方位を12等分して時計回りに振り当てたもので、酉の刻の方角は「西」になります。
そのため、酉の刻の方角から鳥が飛んできたという場合は西の方角から鳥が飛んできたことを意味します。
酉の刻参りとは
次は酉の刻参りについてご紹介したいと思います。
この刻参りで最も有名なのが女性が白装束を着て藁人形に釘を打ち付ける丑の刻参りだと思います。
丑の刻参り以外にも他の十二時辰で刻参りが存在しないか調べる方も多いのですが、残念ながら酉の刻参りは存在しません。
丑の刻参り以外存在しないので、ぜひご参考いただけたらと思います。
「まとめ」
酉の刻参りについてご紹介しましたがいかがだったでしょうか。
酉の刻はあまり聞かない言葉ではあるものの意味さえ分かったら非常に分かりやすいかと思います。
史書などで目にする機会が多いので、ぜひご参考いただけたらと思います。